なんとか2か月間ニュースレターを続けられた。欲を言えばエッセイっぽいものをもう少し書きたかったが、「無理のない程度」を信条にしていたので、続けられただけでも御の字。来年もダラダラと日常を垂れ流していきたい。
📚よんだもの
カンニングー
中国では(それ以外の国でもあるのだろうが)替え玉受験やカンニングサービスが横行しているようだ。パンデミックに伴い、共通試験やTOEFLやIELTSなどの英語能力試験がリモートで実施されるようになり、その規模がさらに増しているという。焼き鳥を片手にワイヤレスキーボードで回答フォームを埋めたり、口パクする受験者の代わりに質問に答えたりする”助っ人”の姿は、小学生の頃に読んでいた漫画『カンニンGOOD』を彷彿させるものがある。
万が一受験者全員がこういったサービスを使った場合、どのように合格者と不合格者が決まるのか? もしかしたらそこにこそ現在の入試に欠けているものが隠れているのかもしれない。しかしなんというかこう、元々階級を飛び越えるチャンスとして存在した試験の合否に、結局金、つまりは階級が少なからず反映されてしまっているところには暗澹たる思いがする。というか元々の「階級を飛び越えるチャンス」という体裁がすでにまやかしだったのかと考えてしまう。
Aの棒はどこへ消えた?
韓国の自動車メーカーKIA(起亜株式会社)の新しいロゴがデザイン界で議論を巻き起こしていたようだ。議論の的は「A」の横棒。新ロゴにはこれがないため、KNと読めてしまうと。実際にGoogle検索では月に3万件ほど「KN car」と検索されているとの指摘も。そこからロゴデザインにおける”横棒なしA”の歴史を辿っているのがリンク先の記事だ。NASAのロゴに代表されるように横棒なしAには視覚的な新規性(かつフューチャリスティックなイメージ)があり、さらに上向きの矢印や、頂上、ズボンを連想させるなどグラフィック的に使いやすいという利点がある。さらに記事ではバイデン大統領のキャンペーンロゴやTESLAのロゴを例に挙げ、”縦棒なしのE”の流行が示唆されている。KIAくらい名前が知られていれば可読性はそこまで問題にならない気もするし、これだけ話題になればロゴ変更の一部の目的は達成しているようにも感じるが。
👀みたもの(ネタバレ有)
Electric Dreams
アマプラ版『ブラック・ミラー』と勝手に呼んでいる、アメリカのSF作家フィリップ・K・ディックの短編を映像化したシリーズ。シーズン1を半分くらい観終えて、特に印象に残っているのがエピソード1の「真生活」だ。
主人公の警察官は、夢の中でなりたい自分になって脳内バケーションを楽しむデバイスを試したところ、人種もジェンダーもセクシュアリティも異なるゲームデザイナー兼起業家としてパラレルワールドに転移する。しかし転移先の世界にも似たようなデバイスが存在し、パラレルワールドでそれを装着すると「元の」世界に戻ってくる。次第に両世界の境界線が揺らぎ、どちらが現実か分からなくなってくる。最終的に夢の世界から離れることを決心する場面で、主人公は自分にとって辛い世界を現実だと判断するが、実はそうではなかった(つまり主人公は辛い夢の世界に留まる結果となった)という描写で話が終わる。
「現実は甘くない」という30年以上生きていれば何度も耳に目にしたことがある観念から主人公の選択には納得がいくが、その諦めにも似た常識には常に懐疑的でいたい。
🎧きいたもの
片野晃輔さんのインタビュー
今年9月にサービスを終了したQartz Japanのポッドキャストで、Wild Scientist片野晃輔さんのインタビューを聴いた。印象に残っているのは彼が向井秀徳の「孤独主義者のくだらんさ」という言葉を引きながら、表面的なオリジナリティの無意味さを語る場面。「一人で思いついたかどうかはどうでもいい。どれだけ言うことに強度があるかが大事。むしろ誰に影響を受けたか、自分はどんな位相にいるのかを説明できるほうがクールだ」と言う片野さん。耳が痛い。
今年のニュースレターはおそらくこれが最後になるかと思います。よい年末年始をお過ごしくださいね。それでは、また来年👋