子どもの頃は、毎日3食とるのが普通だと捉えていた。それはありがたいことに食卓に毎度ご飯が出されていたからだ。
でも大学、いや高校に入るくらいになると朝食を食べないタイプの人に出会うようになり、最初は心底驚いたものだ。その数は年を重ねるに連れて多くなった気がする。今や断食が流行し、巷には食事を抜くことをテーマにした本が無数に出版されているほど、食事のリズムを変えることは一般的になった。
最近僕も「昼ご飯いらんな」と感じた瞬間があった。経験上、朝食を抜くと日中頭と体の動きが悪くなるので、朝は抜かないようにしている。ただ例えば朝食を8時にとったとして、お昼の時間はたった4時間後に訪れる。僕は以前までかいがいしく(つまりは惰性で)4時間スパンを守っていた。しかしある日、思い立って昼食を抜いてみると、昼過ぎに眠気に襲われず、すこぶる調子が良かったのだ。
しかしそれもつかの間。これはいいもんだと数日続けてみたところ、徐々に昼過ぎの空腹に耐えられなくなり、徐々に午後の集中力が減退し始めたのだ。思い返してみるとなんてことない。「昼ご飯いらんな」と感じた日の前日の晩は外食したので食事量がいつもより多かったのだ。今は軽めの昼食と昼寝のセットが最適解というところで落ち着いている。
さて、同じように毎日摂取しているものとして情報があるが、こちらは食事よりも管理が難しい。普段の情報摂取リズムを振り返ってみると、朝ニュースを読んで、移動中にポッドキャストを聴き、昼食時に本を読んで、仕事の合間にネットサーフィンをして、またポッドキャストや音楽を聴きながら家に帰り、自宅で本を読んだり、ネットサーフィンをしたり、映画を観たりしている。これに仕事中のコミュニケーションや資料が加わる。情報を食事に置き換えると恐ろしいくらいの大食いだ。とてもすべてを消化できているとは思えない。
お腹が空いていないときは食べたいものが浮かばない。同様に頭が空いていないときは聴きたいものや読みたいもの、観たいものが思い浮かばないのだと最近気がついた。摂取する情報の多くは「摂取したい」という欲求よりも、惰性や必要性が出発点にあるように感じられた。今僕に必要なのは、情報の断食だ。
……などということをHuberman Labというポッドキャストを聴いていて考えた。このポッドキャストは、スタンフォード大学で教鞭を執る神経科学者アンドリューDヒューバーマンがホストを務め、食事や生活習慣が生理学や神経科学の観点から人間にどのような影響を与えるのかを解説している。「Optimze(最適化)」がタイトルに含まるエピソードが多いことには少々鼻白むが、論文を参照しつつさまざまなトピックについて明瞭に説明する様子にはエンタメ性もある。特にカフェインに関する回は目から鱗だった。